Product Design
私たちは心を育み、生活を美しく彩るプロダクトの製作に、情熱を持って取り組みます。
この節では、一点物の「Picture FRAME(写真立て)」を製作した際のプロセスを一例に、デザインに対するこだわりや技術をご紹介します。
① Sketch / “魅せる”ことに対するこだわり
ヒトもモノも生まれ育つ環境は、多くの点で影響力を持ち、その個性を彩ります。
例えばイギリスにはランドローバーやアストンマーチンがあり、アメリカにはフォードやシボレーといった自動車メーカーがありますが、両国は日射量の違いによって、クルマの面や色の構成で対照的なモノのつくり方をしています。
曇り空が多く日射量の少ないイギリスでは、少量の光でもクルマが艶やかに見えるよう、ポリゴンで区切ったような多面的な面の構成にしたり、反射率の高いメタリック調のカラーリングをラインナップの主軸にするなど、至る所に限られた陽のコントラストを引き出す工夫がなされています。
逆に日射量の多いアメリカでは、シボレーのコルベットやシルバラードに代表されるように、ダイナミックな面や原色に近い色調で力強くボディを表現することが一種の正統派です。
今回「Picture FRAME」の製作に当たっては、部屋の設置環境を考慮の上、限られた光源でもプロダクトが艶やかに映えるように、クリアパーツ(アクリル板)の多段構成とし、併せて日本的な構造美を体現することをテーマに、スタイリングと構造設計の両面からアイデアを展開しました。
② CAD / 美しさの生命線、面造形
スケッチで描いたアイデアの中からもっとも美しくオリジナリティのあるものを選定し、2次元(スケッチなどの平面データ)から3次元(CADなどの立体データ)へ昇華。
③ CAD / 構造設計
面造形が完了後、実際にアクリル板で組み立てることの出来る構造にするため、構造物を適宜分割、0.01mm単位で数値設定をし、図面を作成します。
④ Illustrator / カット用データの作成
加工で使用するレーザー加工機は、AIデータを元に加工がなされるため、その要件に合わせてCADデータからAIデータに変換、適宜カット用データを作成します。
⑤ Machining / アクリル板の切断加工
レーザー加工機は名前の通り、レーザーを部材へ局所的に照射することで、切断や彫刻、マーキング加工を行うことができる加工機械です。
多品種少量生産に向いており、多様で精緻な加工を短時間かつ簡易にできるので、試作や今回のように少量生産を行う際には多用します。
⑥ Assembly / 組立
ここまでの下準備を終えてやっと組立を行います。
当然市販品のプラモデルや家具のように組立説明書はありません。
設計時に頭の中でイメージしていた通りにならないのは常で、実際に組み付けながら理想的な組立工法を探り、設計の修正、再加工を適宜実施しました。
⑦ Assembly / 治具
組立の過程で、構造物の一部がたわんで崩壊してしまうトラブルが発生。
本体部品の他、たわみを抑制するための専用冶具も急遽内製し、一定の品質を確保しました。
冶具は加工や組立の際に部材の位置を固定し、寸法精度を高めるための工具で、品質のバラツキが少なくなる特徴から広く生産現場で用いられています(形は千差万別)。
⑧ Assembly / 本体完成
着想から延べ2週間で、Picture FRAME本体が完成しました。
⑨ Packing Box / 梱包箱の設計と製造
製品本体と併せて、梱包箱も設計、製造します。
今回の製品は原則として一点物ですが、形状が特殊かつデリケートなため、輸送中の破損を防ぐことを目的に専用設計の梱包箱を準備しました。
⑩ Finish / 梱包完了
Picture FRAME本体を梱包箱に納め、すべての工程が完了です。